【第9回】“正しさ”が人を傷つけるとき|支援者に必要な「共感力」とは?

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【第9回】“正しさ”が人を傷つけるとき|支援者に必要な「共感力」とは? 連載「療育現場のリアル」
この記事を書いた人
まっさん

社会福祉士/精神保健福祉士/児童発達支援・放課後等デイサービスの教室長。障害福祉(成人期~未就学児まで)10年以上の支援経験あり。

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こんにちは、社会福祉士のまっさんです。
療育の現場で日々子どもや保護者と関わる中で、「正しいはずなのに、伝わらない」「むしろ、距離ができてしまった」と感じたことはありませんか?

今回のテーマは、「正しさ」と「共感力」の関係。
支援者として持っておくべき知識や技術は確かに大切です。でも、“正しいこと”が必ずしも“相手を支えること”にはならないという現実も、私たちは理解する必要があります。

        

正しさが“壁”になるとき

ある日、初めて相談に来たお母さんが、涙ぐみながら言いました。

「この子には“発達障害の可能性があります”って言われました。でも、そんな風に決めつけられて、どうしたらいいか分からなくて…」

支援者としては、早期支援につなげるために「必要な情報」を伝えたつもりでも、当事者の心は「傷つき」「拒否された」と感じていることがあります。

これは、知識が間違っているのではなく、「伝え方」や「タイミング」、そして「相手の気持ちへの配慮」が不足していたことが原因なのです。

       

支援者にありがちな“正しさの押しつけ”

こんな言葉、言ったことはありませんか?

  • 「このまま放っておくと将来もっと困りますよ」
  • 「専門家の言うことを信じてやってみてください」
  • 「今の関わり方が、よくないんです」

これらはすべて、事実に基づいている「正しい言葉」です。
でも、今の保護者にとって受け止められる準備ができていなければ、正しさは暴力になってしまうのです。

          

「共感力」が支援のカギを握る理由

共感とは、相手の気持ちに寄り添い、その感情の背景を想像し、否定せずに受け止めること。

これは「かわいそうだと思うこと」や「同じ気持ちになること」とは違います。
大切なのは、相手がそう感じていること自体を否定せず、受け止める姿勢です。

共感を持って関わると、こんな変化が生まれます。

  • 保護者が「話してもいい」と思える関係性が育つ
  • 提案に対する信頼感が生まれる
  • 「わかってもらえた」という経験が、支援の継続につながる

     

支援の中で「共感力」を発揮する工夫

1. まずは“気持ちの確認”から始める

「突然のことで、びっくりされたと思います」
「どう感じられたか、お聞きしてもいいですか?」

相手の気持ちを言語化する手助けをすることで、心の整理が始まります。

2. アドバイスより“気持ちの共有”を優先する

「大変な中でも、こうして相談してくださってありがとうございます」
「それだけ、お子さんのことを大切に考えていらっしゃるんですね」

気持ちが受け止められることで、「聞く耳」が開かれます。

3. “同じ土俵”に立つ姿勢を示す

支援者だからといって“上から”にならないよう、自分も迷う存在であることを伝えることで、信頼関係は深まります。

     

まとめ|「正しさ」よりも「伝わる支援」を

支援の現場で求められるのは、「専門性」と「共感性」の両立です。
どれだけ医学的・発達的に“正しい”情報であっても、相手に伝わり、受け取ってもらえなければ意味がないのです。

共感力は、相手を変えるためのツールではなく、「相手の世界に足を踏み入れる覚悟」から生まれるもの。
そのうえでこそ、本当に必要な支援や提案が“生きたもの”として届くのです。

次回は、「【第10回】「うちの子だけ違う…?」親が抱える“見えない孤独”に寄り添う」──子どもの発達に悩む保護者の多くが抱える“孤立感”。その背景にある「言葉にならない不安」とは?社会福祉士ができる支援のヒントを探ります。

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