【第6回】支援者も迷っていい|「正解がない」療育の現場から見えてきたこと

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【第6回】支援者も迷っていい|「正解がない」療育の現場から見えてきたこと 連載「療育現場のリアル」
この記事を書いた人
まっさん

社会福祉士/精神保健福祉士/児童発達支援・放課後等デイサービスの教室長。障害福祉(成人期~未就学児まで)10年以上の支援経験あり。

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こんにちは。社会福祉士のまっさんです。
この連載では、療育の現場で感じる“支援のリアル”を、社会福祉士の視点からお伝えしています。

第6回のテーマは「支援者の迷いと葛藤」。
日々支援に携わる中で、「これでよかったのか?」「本当にこの関わりが正しかったのか?」と自問自答する場面が、何度もあります。

今回は、支援者も“迷っていい”という視点について、実際の現場の声を交えて考えていきます。

         

療育に「正解」はあるのか?

療育は、医学・心理・教育・福祉といった多領域が交わる支援のかたちです。
それだけに、関わる専門職も、家庭も、そして子ども自身も、「唯一の正解」を見つけにくいのが現実です。

  • 「感覚過敏にはこう関わるべき」
  • 「こういう行動にはこの支援方法が効果的」

── そんな“教科書通り”にいかないことのほうが、はるかに多い。

子ども一人ひとり、家庭一つひとつに背景と個性があるからこそ、支援に“揺らぎ”はつきものなのです。

    

支援者が抱える「見えないプレッシャー」

療育や福祉の現場では、支援者自身が次のようなプレッシャーを抱えていることがあります。

● 「ちゃんと成果を出さなければ」

「支援したのに子どもが変わらなかった」と感じると、
「自分の関わりが間違っていたのでは」と自責の念に駆られることがあります。

● 「専門職なのだから、答えを持っているべき」

保護者から信頼を寄せられる一方で、「期待に応えなければ」というプレッシャーがのしかかる場面も。

● 「他の支援者と比べられる不安」

多職種連携の中で、支援方針の違いや評価のずれに戸惑い、「自分だけが間違っているのでは」と感じることも少なくありません。

     

現場のリアル:「これでよかったのか?」という問い

私が実際に経験した一場面をご紹介します。

ある感情表出が苦手な子に対して、数ヶ月かけて安心感を築き、少しずつ関係性が深まってきた矢先、
「最近、あの子がお部屋に入るのを嫌がってるらしいよ」と他スタッフから耳にしました。

「自分の関わりがプレッシャーになっていたのか…?」
「もっと違う方法があったのでは…?」

一時は深く落ち込みましたが、後日その子がポツリと「でも、〇〇先生がわかってくれるから大丈夫って思ってる」と言ってくれたのです。

“目に見える成果”だけでは測れない信頼関係のかけらが、そこにありました。

    

「迷い」と「振り返り」は支援者の強み

支援者にとって、迷いや不安は「失敗」ではありません。
それはむしろ、目の前の子どもや家族に真剣に向き合っている証です。

迷いながらも、

  • 「今の支援は、この子に合っているか?」
  • 「家庭にとって負担になっていないか?」
  • 「もっと別のアプローチがあったのでは?」

──と立ち止まり、振り返り、微調整を重ねることこそが、専門職としての“柔らかさ”であり強さなのです。

       

支援者同士の「対話」と「許し合い」を

迷いを抱えたまま、一人で支援に向き合うことは、とても消耗します。

だからこそ、支援者同士が

  • 「こんなケースで悩んだことがある」
  • 「私はこう関わってみた」
  • 「あのとき、うまくいかなかったけど、また挑戦してるよ」

──そんな言葉を交わせる環境こそが、支援の質を支える“土台”になります。

支援者自身が“安心して迷える場”を持つことは、結果的に支援対象者にも良い循環を生むのです。

     

保護者へのメッセージ:支援者も“迷いながら向き合っている”

保護者の方へ。
支援者も、実はたくさん悩み、考え、揺れています。

でもそれは、お子さんと、ご家族のことを本気で大切に思っているからこその迷いです。

ですから、もし支援方針に疑問や不安を感じたら、遠慮なく伝えてください。
一緒に考え、寄り添い、修正していけるのが“チーム支援”の本来の姿です。

     

おわりに|「迷うこと」を肯定する文化を育てたい

「迷いがあるからこそ、成長がある」
「正解がないからこそ、その子に合った支援を探し続けられる」

療育の現場において、支援者自身が自分の迷いを否定せず、他者と分かち合える文化が広がっていくことを願っています。

そしてそれは、支援の質を高めるだけでなく、
子どもたちにも、「大人も迷っていい」「完璧じゃなくていい」という大切なメッセージになるはずです。

次回は、「【第7回】現場で感じた“違和感”を大事にする|制度と現実のすき間で生まれるもの
制度やマニュアル通りにはいかない現場で感じる「モヤモヤ」こそ、支援を見直す大切なヒントであることについてお伝えします。

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