発達障害のあるお子さんを育てる家庭において、現場で私が最もよく耳にするのが、「母親ばかり頑張っていて疲弊している」という声です。
日々の療育の送迎、関係機関との連携、感情の起伏の激しい子どもへの対応——これらの負担が、自然と母親一人にのしかかってしまっているケースは決して珍しくありません。
しかし、家庭は「チーム」です。そしてそのチームの中で、父親にしかできない大切な役割があります。
本記事では、療育教室の教室長として10年以上支援してきた経験から、父親が今すぐできる、実践的で効果的なサポートをご紹介します。
子どもの特性を“自分の言葉”で説明できますか?

母親だけが発達障害の知識を深め、父親は「なんとなく」で終わっていませんか?
例えば保育園や学校で「この子は何が苦手ですか?」と聞かれたとき、父親が自信を持って答えられる状態であることは、家庭全体の安心感につながります。
- まずは母親が読んでいる本・支援機関の情報を共有してもらいましょう。
- 自分の言葉で子どもの困りごとを語れるようになると、家庭内での会話が変わります。
「ママのために何ができる?」という視点を持つ

発達障害の子どもは日常の予測不能な行動が多く、1日中気を張っている母親は「気づかないうちに疲弊」しています。
「自分が何かを手伝う」ではなく、「ママの負担を減らすには?」という視点を持つことが本当のサポートです。
- 朝の支度を「俺が見るよ」と声をかける
- 子どもが寝たあと、1杯のお茶を用意して「お疲れ様」と伝える
- 子どもの将来への不安を一緒に考える
感情のコントロール役になる

発達障害の子育ては、感情が揺さぶられる場面が多々あります。
母親が感情的になってしまう場面で、父親が冷静に受け止めてくれることで、子どもも落ち着きを取り戻すことがあります。
「お父さんが“クッション役”になってくれると、家庭の空気が変わる」という声は多数あります。
外とのつながりを広げる“窓口”になる

母親が1人で情報収集・通院・支援手続きまで担っていると、負担は相当なものです。
父親が支援センターや療育先に顔を出すことで、「家庭全体が支援を受けている」という姿勢が伝わりやすくなります。
- 支援センターの相談に一緒に行く
- 学校の個別面談に参加する
- 書類手続きや見学などを分担する
「ただ話を聞く」ことが最大の支えになる日もある

ついアドバイスをしたくなる父親は多いですが、実は母親が求めているのは「共感してほしい」だけ、というケースも多くあります。
- 「大変だったね」「それはしんどいね」と共感の言葉を先に
- 改善案を求められるまでは提案しない
- 否定せず「そうなんだ」と受け止める
子どもとの関係性を“母親経由”にしない

「ママが言わないと動かない」「ママに聞かないとわからない」——これは父親が子どもとの直接的な関係を築けていないサインです。
父親自身が、子どもとの時間を積み重ねることで信頼関係ができると、家庭内のバランスも整います。
- 子どもと一緒に料理・工作・散歩など、ルーティン化できる関わりを作る
- 「パパと2人だけの時間」を意識的に作る
自分の気持ちにも正直になっていい

父親としての役割に「完璧」を求めすぎてしまうと、返って心が疲れてしまいます。
時には「自分もわからない」「不安だ」と言葉にすることが、夫婦の連携につながります。
「パパも悩んでいるんだね」と母親が気づいたとき、夫婦の間に新しい信頼が生まれることがあります。
まとめ:父親にしかできない“支える力”がある

発達障害の子どもを育てることは、想像以上にエネルギーが必要です。そして、それを母親1人が抱えてしまう状況では、家庭全体のバランスが崩れがちです。
でも、父親が「自分の役割」を理解し、日々の中でできる支えを意識することで、家庭は確実に変わります。
難しいことをしなくても構いません。
小さな行動の積み重ねが、家族の未来をつくっていきます。
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